よくいる57歳の日記

そこらへんによくいる56歳の日記

リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ @国立西洋美術館 

リニューアル後初訪問。金曜日の延長オープン時間帯に参加。

・・・ひさしぶりに「地獄の門」を近くで観れた。 前庭がコンクリ敷き詰めになっていて、前からこうだっけ?もうちょっと植え込みとか土があったような気がするのだが。 ホームページでみたら、1959年の竣工時に戻したんだそう。

前庭リニューアル...

美術館の建築|国立西洋美術館 (nmwa.go.jp)

門首塚のコンクリ敷き詰めは衝撃だった。こちらは前の雰囲気に戻してほしいなあ。

 

展示内容はドイツのフォルクバング美術館と、こちらの松方コレクションからセレクションした近現代美術の展示。

結論からいって、さすがに学芸員さんのレベルが高い、と思った。

前半はブーダン、モネ、マネ、ピサロ といった印象派とその時代+α って感じの展示なのだが、描かれているのは光と風と水であって、モノではないのだが、モノそのものとの対話からこれらの表現は誕生しているのだ、ということが理解できるように並んでいる。

中盤いくと、カンディンスキーの連作を左右に並べ、突き当たりにミロの大作…という一角があり、ここに住みたい…と思う空間…。カタログだけでみたら、ミロの絵は描かれているものが少ないので小さいのかな?と勘違いするが、実際はこうですよ…。と、座学の罠からはっと目が覚めるみたいな。

松方氏と懇意にしていたブラングィンさんが描いた「共楽美術館俯瞰図」が展示されていた。松方さん生前には美術館を建てることができなかった。

ブラングィンさんの描いた美術館の絵には、中庭がある。

神奈川県立近代美術館、坂倉準三設計は小さい中庭があって、ノグチイサムがすみっこに飾られていて、二階にぐるっと囲んだ回廊があって見下ろせるようになっていた。中二階に喫茶室があった。2.5階みたいのは、コルビジュエにもたくさんあるが、耐震的にはNGなんだろうな。自然光が入ることも美術品保護の基準が厳しくなってNGになった。神奈川県が建物を放棄したのは、耐震が理由だけど、光のこともあったのかもしれないなあと思う。重要文化財に指定され、鶴岡八幡宮のお休み処になっているようで、壊されないだけいい。理想の美術館だった。

松方コレクション…

ナチスドイツが没収した美術品と違って、松方コレクションは軍国ニッポンとはなんの関係もなくきちんと対価を支払ったものだったのに、松方さんがフランスに保存していたコレクションは敗戦国の財産とみなされ日本に持ってこれなかった。ロンドンに保存していたものは倉庫の火災でなくなった。

松方さんは裕福だったが、それ以上に審美眼に優れた人だったのだろう。近現代のものを買ってみんなにみせたい、と願っていたというのは、肌で今のアートを感じられる人だったからだろう。国立西洋美術館にある古い宗教画やらなにやらは二代目館長が購入したらしいが、私はこういうのはゆかりのある国にあったほうがいいと思う。

政治的な交渉と金銭での買戻しを続け、1959年に戻ってくることになったコレクションのために政府が建てたのがコルビジュエ設計の世界遺産国立西洋美術館本館。今は吊られてる階には入れないけど、みるだけでも楽しいところ。

最後のほうは、ゴッホ「刈り入れ」… 見た目すごく可愛い絵なのだが、正式なタイトルは「刈り入れする人のいるサン・ポール病院裏の麦畑」。ゴッホは、人間も麦のように刈り取られて終わる、と思っていたそう。そしてムンクの露悪的な漫画、「アルファとオメガ」。ムンクって、病的なイメージだけど、絵を描き、商売し(装飾品として自分の絵を売っていた)、入院もし退院もし、けっこう長生きした。エリートじゃないし健やかに生きられない、そして露悪的な絵も描いちゃう、でも人生やりきった。見習うしかない。

スマホを忘れてたので鑑賞に集中できた。